山旅紀行

   イタリアアルプストレッキング        その４   アヤス谷からトゥルナンシュ谷へ
                                                            

６月２８日（水)
  今日明日と、途中山小屋で一泊してヴァルトゥルナンシュ（トゥルナンシュ谷）へ抜ける行程である。
   ホテルから送迎車でアヤス谷最奥の集落サンジャックへ。このまま谷をずっと詰めていけばアヤス谷ガイド小屋に至るのだが、我々は橋を渡ってすぐ右の細道を上がる。アルテヴィエ１の続きだ。
   道はすぐに南西に向きを変える。今日は何度か自動車道を横切り、傾斜もあまりなく随所にのどかな放牧地が広がる開けた谷間を行くコースだ。行動時間も短い楽な一日となるだろう。
   歩き始めて２時間ぐらいか、振り返ると雪山が広がっている。ポルーチェ(4091m)、カストーレ（4221m）方面だ。青空でないのでいま一つ映えないのが惜しい。 		  
    出発点サンジャック
 
ポルーチェとカストーレ
   グランドトゥルナリン(3379m)の南側に大きな扇状地状のカールが広がり、その末端あたりに今夜泊まるグランドトゥルナリン小屋があるのだが、とある平坦地ですぐ先の丘の上に建物が見え、それが小屋だと思ってここまでくれば安心と大休止したら、それが大間違い。
   のんびりしているうちに空模様が怪しくなってきた。急いで出発準備するが、小雨がパラパラ落ちてくる。一部の者だけ雨具をまとい、そのうち雨脚が強まってきたので全員雨具を着る。
   やがて雷も鳴り出し、目の前の小屋へ急ぐ。ところが様子がおかしい。それはしばらく使われていない模様の牛小屋だった。床は牛糞だらけで荷物を降ろすのがためらわれるが、とにかく緊急避難、中に入るしかない。		  
  グランドトゥルナリン
   落ち着いて地図を取り出すと、小屋の手前で一度車道に合流するのだが、まだそこまで来ていないことがわかる。小屋まであと１キロほどありそうだ。今日は楽な行程だと思って、地図をきちんと見なかったのがいけなかった。
   雷がゴロゴロ言わなくなり、雨も上がったので出発。３０分ほどでグランドトゥルナリン小屋に到着。大休止しなければ天気が崩れる前に着いていたのに。
   小屋の高度は2544m。ここまで自動車道がついているので電気が使える。中もきれいだ。それに山小屋としては珍しく二段ベッドではないのもよい。
   小屋は若い男女が二人で切り盛りしている。夫婦かと思ったら、女性のほうが「ただの友達」と言った。翌日泊まったトルニョンのホテルのマダムが、彼女とは友達で名前も同じエレーナだと言う。		    
  これが本物のグランドトゥルナリン小屋
  

  自動車もある
 
２９日（木）
   今日は二つの峠越えがある。といっても、高度差は少なく、距離も短い。
   朝はほとんど雲がない素晴らしい天気だった。だが出発してほどなく次第に雲が広がってきた。
   		    
  小屋付近から南方を望む 

小屋を後にする  この時点では上天気		    
             背後にモンテローザ山群 

     
   小屋を出てほどなく、まだ小屋を見下ろせる地点で背後にモンテローザ山群が見え出したが、最上部のほうは既に雲に覆われてしまっている。
   スタンベッコが姿を見せる中、緩やかにナナ峠2775mを目指す。峠直下で残雪を踏む。

   峠からの大展望を期待していたのに、朝方の快晴はどこへやら、２時間もたたないうちにアヤス側もトゥルナンシュ側も空全体が雲に包まれてしまった。このところ大体こういう天候パターンだ。

   
  
                      ナナ峠から行く方 		   
     ナナ峠直下

ナナ峠・フォンタネッテ峠間の池		    
    フォンタネッテ峠からトゥルナンシュ側
中央上寄りにチニャーナダム湖が見える
   フォンタネッテ峠(2695m)まで来るとトゥルナンシュ谷の全容が見える。 対岸中腹にチニャーナ湖がはっきりわかる。その右斜め下の町並みはトゥルナンシュ谷の中心部ヴァルトゥルナンシュだ。
   僕にとって、アオスタ谷で最も馴染みのあるのがヴァルトゥルナンシュだと言って差し支えない。
   今回、ヴァルトゥルナンシュで大きな目的がある。それは昔山スキーで世話になったガイド・ニオの墓参りだ。それについては山スキーの項「ニオの墓参り」参照のこと。

   フォンタネッテ峠からは歩きやすい緩やかな下りが続く。		    
    アルペンローズ
 
   思いのほか早くシェネイルに降りてきた。４時に迎えの車が来ることになっていたが、まだ２時間もあり、おまけに雨まで降ってきた。早く迎えに来てくれるよう頼もうと思ったら、電話は圏外。少し下ればつながりそうなので１０分ほど車道を下っていくと圏内となり、４０分後ぐらいに来てくれることになった。
   ヴァルトゥルナンシュ中心部のホテルエトワールドネイジュに泊まりたかったが、６月いっぱいは休業ということで、だいぶ離れたトルニョンという所のホテルとなった。
   送迎バスはそのエトワールドネイジュの前を通り、ニオの墓と自宅はすぐそばにあるので、３０分ほど止まってくれるよう頼んで墓地へ急ぐ。その間他の者は近くのカフェでホットチョコレートを飲んで、それがとてもおいしかったと言う。		    
     シェネイルの超短いケーブルカー